2011年5月6日金曜日

EXPOSE 死の灰 展

今年3月にオープンした西太子堂の粟津ケンさんのスペース、KEN に、「EXPOSE 死の灰」展のイヴェント、花いけの上野雄次さんによるパフォーマンスを観に行きました。

会場では、1954年アメリカの水爆実験により被爆した第五福竜丸が浴びた死の灰と、関連する作品の展示が行われていました。この展覧会は震災前から企画されていたもので、原子力発電所の問題が収束しないこの時期にあって、とてもデリケートな問題に触れると同時に、期せずしてタイムリーともいえる展示内容でした。

開演直後にまず第五福竜丸の事件についての短いドキュメンタリー・フィルムの上映。被爆による症状が特に重かった久保山無線長が亡くなられたときのマスコミの集まり方など、当時相当のインパクトがある事件だったことが想像されました。

そして次が上野さんのパフォーマンス。死の灰が置かれていた台を踏み台にして、シルクスクリーンや写真の展示作品をすっかりビニールで覆って封じ込めてしまいました。その台がけっこう高さがあり不安定で、よじ登るときの身のこなしはさすが上野さん。会場の床を養生したプラスティック素材(?)が電球で溶けかけてすごい匂いを放ち、かなりハラハラしました。でもそれは序の口。椰子(?)の植木を痛めつけるようにビニールでぐるぐる巻きにし、そのビニールを破って葉を乱暴に引き出し、しかもその間ずっと炎が噴出すガスバーナーが傍らに置かれている状態。バラの花を植木に巻きつけたビニールの間に差し込んでいったり、差し込みきれなかったバラの花をバーナーで燃やしたり、相当激しいものでした。

パフォーマンスのあとは、粟津ケンさんや展示作家の方も交えてトークショー。震災や震災後の光景、そして上野さんのパフォーマンスをどう捕らえるのか、皆真摯に語っていたけれども、なにか核心に触れられないつっかえたような雰囲気もありました。最後のほうに観客からの意見も交える段階でなんとも調子っぱずれな進行になり、慌ててまとめてお開きにしたような感じで終了。時間切れで仕方がなかったですが、その後があれば、とことんまで語ればもっと深いところに行くことができたのかもしれない、とも思います。

展示はほとんど観られる状態ではなかったので、後日イヴェントのない日に再び会場を訪れました。新井卓さんによる、死の灰を使った写真の展示、これは5分ぐらいの音と照明によるプログラムと合わせて観るようになっていました。これを体験しないで先日のトークショーを聴いていても意味がわからないところが多かったです。この作品の撮影をしているときにまさに3月11日の震災が起こったそうです。

第五福竜丸でボランティアもしているデザイナーの上浦智宏さんによるシルクスクリーン作品、この作品も新井卓さんの作品も、上野さんのパフォーマンスの時にビニールで覆われてしまったのだけれど、それによって作品が完成した気がすると上浦さんはおっしゃっていた、それが印象に残っています。デザインというものはやはりそれだけで機能するものではない、そういった謙虚さを持って作品を作っている方なのだと思います。